風俗描写

野良犬(黒澤明、1949年)[amazon]

このころの三船敏郎はガムを「ぺっ」と吐き捨てるように、短く叩きつけるように科白を喋る。おかげで細かいところが聞き取りにくくて困った。大体の設定は事前に知っていたので、ストーリーを追うのに苦労はしなかったのだが、科白が聞き取れないとなると、注意は風俗描写のほうに向かってしまう。あの野球のシーンは、本物の試合をロケしたものなのかな、等々。

早坂文雄の音楽(の使いかた)はなかなかに面白い。このひとの名前は現代音楽関係の文献で目にする機会は多いのだが、実際の作品は黒澤映画のなかでしか聴いたことがない。「現代音楽の作曲家が娯楽映画の劇伴を手がける」という風潮は武満徹の死後、ほとんど息絶えてしまったね。オレの知らないところで重要作が作られているのかもしれないが。