シュリ

「シュリ」[amazon]。「外国映画」のつねとして登場人物の名前と顔が憶えきれず、最初は物語に入り込めなかったのだが、後半はどんどん惹き込まれる。

われわれ1970年代生まれの日本人はすっかり民主化され、近代的な国家になってからの韓国しか知らない。そのため日本も韓国もパラレルな「戦後」を歩んできたかのように思い込みがちである。しかし日本がウォークマンだのスペースインベーダーだので浮かれていた時代になってもかの国では軍事独裁政権が続いており、大統領の暗殺や軍部による反体制勢力の鎮圧といった血腥い事件が起こっていたのだ。しかも隣国との緊張関係はいまだに解消されることがない。この差はわれわれが思っているよりも大きいのではないか。

少なくとも日本映画で「隣国の特殊部隊と自国の諜報員が白昼の首都で市街戦を展開する」なんてシーンを撮っても、コメディーにしかならない。しかし韓国映画ではそれが充分な説得力を持つのだ。しかしこんなシーンがリアリティーを持ってしまうとは、それはそれで悲しい話ではないだろうか。たしかに「シュリ」はいい映画だけど、「むかしはこんなバカな設定の映画が受けたんだよねえ」と朝鮮半島のみなさんが朗らかに笑い合える時代が一刻も早く来てほしいものだと、これらの対立すべての要因になった国に住んでいる者としても切に願うのであった。サヨクな感想ですみません。