ミステリ脳の恐怖

神狩り 2 リッパー

神狩り 2 リッパー

悪い作品ではないのだが、「クオリア」やら「パノプティコン」やら「ダーザイン」といった単語を(いささか不用意に)持ち出したために、かえって物語としての妙味が失われた感がある。山田正紀はむかしから勉強した成果を素直に作品に反映させるひとだが、もういい歳なのだから(笑)、切り捨ててもかわまないものはばっさり切り捨ててもいいのではないか。まあ、そこでばっさり切り捨てられないひとの良さが山田正紀の魅力であり、彼が悪い意味での「巨匠」にならないゆえんでもあるのだが。

あとこの作品を読んで、ここ10年ばかりのオレが「ミステリ脳」を患っているのを実感した。エンターテインメント系の小説に「判りやすいオチ」「すべてがひとつの『真相』に向かって収斂していく快感」を求めてしまう傾向を、オレはこう呼んでいるのだが。はやくSF脳に戻りたい……

「日本は外交を放棄している」蓮実重彦・元東京大学総長

http://japanese.joins.com/html/2005/0321/20050321200347400.html

中央日報の記事より。蓮實重彦のコメント自体に特に新味はないが、韓国人の記者が最後に付け加えた「国境の概念を離れて、互いに関心を持って、相手側が良くやったことは称賛する関係になろう、との意味に受けとめられる」という脚注めいたセンテンスが面白い。蓮實的なレトリックは、日本語を母語としていないひと(あるいは蓮實重彦の過去の著作や発言を知らないひと)にとっては真意の伝わりづらい、ほのめかしの多い発言に思われるのだろうか。