追悼

練馬駅前の書店で嵐山光三郎『追悼の達人』(新潮文庫[amazon]を買う。『文人悪食』とネタがかぶる文章がいくつかあるが、それでも読ませる。谷崎とか荷風とか、ちゃらんぽらんな作家にかぎって長生きするのは皮肉である。

あと神秘的・幻想的な作風の作家は、死後の世界や心霊の存在をちゃんと信じているものなのね。戦後文学では「そういうの」を信じていない作家のほうが「そういうの」を好んで描く傾向があるので(SFを「お化けを信じない怪談」と定義したのは安部公房ですね)、かえって意外な感じがする。

……秦野章の選挙戦で、ホテルで按摩をとっているとき、川端(康成)は突然起きあがって、「やあ、日蓮様ようこそ」と挨拶し、そのあと、風呂場へ歩いていって「おう、三島君、君も応援に来てくれたか」と言い、按摩はぞっとして逃げ帰ったという。
もちろんこれは、三島の死後のエピソードである。

薬を飲んだすぐあとに下痢をすると、薬の成分がすべて排出されたような気になって、同じ薬をもう一度飲みなおしてしまう。これってたぶん、医学的には間違ってるよね? 激しい下痢に悩まされている最中に下痢止めの薬を飲み、そのあとすぐに下痢をすると、薬が効いていないのか、それとも薬の飲みすぎで副作用を起こしているのか、にわかには判断がつかなくなる。あるいは薬を服用するために飲んだ冷水のせいで、下痢を起こしてしまったのかもしれず。

吐瀉

狩野がエサを食べすぎて吐く。猫の吐瀉物はだいたいびちゃびちゃしているものだが、今回は人間の糞のようなきちんとした実体のある細長いものが「するん」と口から飛び出してきたので仰天する。まるで猫の消化器にセメントを詰め込んで、ほどよく固まってきたところで引きずり出してきたかのようである。