追悼

練馬駅前の書店で嵐山光三郎『追悼の達人』(新潮文庫[amazon]を買う。『文人悪食』とネタがかぶる文章がいくつかあるが、それでも読ませる。谷崎とか荷風とか、ちゃらんぽらんな作家にかぎって長生きするのは皮肉である。

あと神秘的・幻想的な作風の作家は、死後の世界や心霊の存在をちゃんと信じているものなのね。戦後文学では「そういうの」を信じていない作家のほうが「そういうの」を好んで描く傾向があるので(SFを「お化けを信じない怪談」と定義したのは安部公房ですね)、かえって意外な感じがする。

……秦野章の選挙戦で、ホテルで按摩をとっているとき、川端(康成)は突然起きあがって、「やあ、日蓮様ようこそ」と挨拶し、そのあと、風呂場へ歩いていって「おう、三島君、君も応援に来てくれたか」と言い、按摩はぞっとして逃げ帰ったという。
もちろんこれは、三島の死後のエピソードである。