「かわいい」再考・フランス編

さてフランス語では女性を示す名詞として、"fille"と"femme"がある。"fille"はあくまでも未熟な女性であり、"femme"は成熟した女性を意味する。そして"fille"と"femme"の中間領域を指す言葉がない。日本の文化は、なぜかこの中間領域にある女性を愛でる伝統がある。現代的な例ではアイドル歌手やアニメの美少女キャラクターが挙げられるだろう。「モーニング娘。」や「文化系女子」といったネーミングに顕著なように、こうした中間領域にある女性には「娘」やら「少女」やら「女子」やら「女の子」と多彩な語彙が用意されている。プルーストが「幼い少女や非常に若い女性」を指す言葉として"mousmé"に飛び付いたのは、フロベール風に言えばこれこそが"mot juste"だと感じられたからではないのだろうか。