貴族のお仕事

以下の引用は、特定の誰かに対する当て付けではない。

 実用書の編集をしていた頃、私自身も冠婚葬祭関係の本の編集に携わったことがある。その経験を踏まえていうと、冠婚葬祭マニュアルの編集は、きわめて手間ひまのかかる、そして高度な編集の腕が要求される仕事である。それに比べたら人文書や文芸書の編集は貴族のお仕事に等しい。「ただの実用書」「単なる実用書ではなく」みたいなことを言われると、だから私は噴き出したくなるのである。貴族は困ったもんだな、と。
斎藤美奈子『冠婚葬祭のひみつ』(ISBN:4004310040)あとがきより

共著や編著も含めれば、無慮50冊以上の実用書の編集・執筆にかかわったオレにすれば、まことに胸のすくようなひとことであった。「貴族のお仕事」よりもよほど大変だというのに、同業者さえそのことを理解しない(しようともしない)のは、まことに嘆かわしいかぎりである。