集めたき書

以前、大学の図書館で借りて読んだ柴田南雄『私のレコード談話室』(朝日新聞社、1979年)をアマゾンのマーケットプレイスで入手する。送料も含めて1000円弱。もとの定価が1200円なのだから、安い買い物であった。これで彼の著作で私有していないのは、共著、訳書、楽譜は除けば、あますところ6冊となった。安原顯柴田南雄吉田秀和に較べて過小評価されていることに怒っていたが、これにはオレも同意する(もっとも評論を専門にしていた吉田と、本業は作曲家であり、生計のために評論の執筆、大学の講義、各種媒体への出演をこなしていた柴田を安易に較べるのはアンフェアだが)。どんなに経済的に困窮しても、絶対に手放したくない著作家のひとりである。
もし全著作を揃えたら、全集か名エッセイ集でも企画したいところだが、クラシック音楽に関する正規の教育を受けていないオレが企画書を持ち込んでも、どこも相手にしてくれないのだろうなあ。
しかし生前はどれほど人気のあった批評家でも、何人かの例外を除けば死後ともなれば入門書や教科書しか残らないのは、じつに淋しい話である。前にも書いたかもしれないが、いま一般の書店で手に入る彼の著作で「柴田節」を辛うじて堪能できるものを紹介する。

楽器への招待 (新潮文庫)

楽器への招待 (新潮文庫)