作家は「書く機械」?

文学者の短い評伝を読むたびに感じるのだが、彼らはデビューする前の人生のほうが圧倒的に面白い。これは当然と言えば当然で、専業作家としての地位を確固たるものにすれば、あとは机に向かって書きつづけるだけの毎日が続くことになる。三島由紀夫のように意識的にスキャンダルな事件を連発しなければ、地味にならざるをえない(女性作家は出産や育児といった経験が起こり、それによって作風が変化することがあるので、また別に考えなければならないかもしれないが)。澁澤龍彦の後半生など、矢川澄子との一件を除けば書いて、読んで、たまに旅行して、の繰り返しであって、本格的な評伝を書こうと思った研究者は話題の少なさに困ってしまうかもしれない。石原慎太郎は波瀾万丈じゃないかって? あのかたがぶんがくしゃであるかどうかは、かれのさくひんをまったくよんだことのないぼくにははんだんできません。