澁澤ベスト5

今日は澁澤龍彦の20回目の命日。そんなわけで、個人的な澁澤作品のベスト5を選んでみる。いわゆる「澁澤マニア」があまり選ばないものがならんだ気がするのだが*1、さてどうだろう。

  • 『玩物草紙』

澁澤が「アングラ」や「悪魔主義」だけのひとではないと気付かされた1冊。のほほんとした味わい。同じ傾向の作品としては『狐のだんぶくろ』があるが、よりリブレスクな『草紙』のほうが好み。

玩物草紙 (中公文庫)

玩物草紙 (中公文庫)

狐のだんぶくろ―わたしの少年時代 (河出文庫)

狐のだんぶくろ―わたしの少年時代 (河出文庫)

澁澤唯一の長篇小説。高校の図書館に買わせたのだよな。いまとなってはポケットマネーで初版本を買っておけばよかったと後悔することしきり。短篇集はどれも佳作ぞろいだが、あえて1冊だけ選ぶとしたら『うつろ舟』か。

高丘親王航海記 (文春文庫)

高丘親王航海記 (文春文庫)

うつろ舟―渋澤龍彦コレクション   河出文庫

うつろ舟―渋澤龍彦コレクション   河出文庫

  • 『幻想の画廊から』

ふつうの美術史には出てこない画家を、この本で知ることができた。特にバルテュスを知ったのが大きな収穫。

幻想の画廊から―渋澤龍彦コレクション   河出文庫

幻想の画廊から―渋澤龍彦コレクション   河出文庫

ふつうの文学史……(以下略)。特に小ロマン派を知ったのが大きな収穫。この本でオルタナティブなフランス文学に興味を持ったひとは『サド侯爵の生涯』、そして三島の戯曲もどうぞ。

サド侯爵の生涯 (中公文庫)

サド侯爵の生涯 (中公文庫)

サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)

サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)

  • 『偏愛的作家論』

読書ガイドとしてはあまり役に立たなかったが、澁澤にしては珍しく日本人作家を集中的に論じた本として。

追記

『ドラコニア綺譚集』の存在をすっかり忘れていた。小説とエッセイの中間的な作風で、のちに創作活動がメインとなる澁澤の文筆活動を予告しているようで面白い1冊。

*1:その証拠に、アマゾンに書影のデータがないものが多くなった。