モチよ!

連休中は本格的にごろりとしていたので、なかなか調子が取り戻せず、寝室で文庫本をぱらぱらと読みながらすごす。

 田舎からおばあさんが来ました。女学校に行っている娘をたずねて来ました。娘は停車場におばあさんを迎えました。娘はおばあさんに話すのに「モチよ!」「いいわよ!」「いやだわ」というような言葉を連発しました。おばあさんは何の事だかわけがわからなくて、しばらくこの娘の顔を見ていました。(中略)私は女学生や芸者などはニッポンの言葉などをだんだん変えてゆく重大な役割を演じているように見えます。私は女学生語や芸者語は抑揚があってなかなかおもしろい言葉だと思います。
兼常清佐「女学生の言葉」

このエッセイがいつ書かれたのか、正確なことは判らないのだが、1937年に刊行された単行本に収録されているので、昭和ひと桁か、大正の終わりのものだろう。
ここでオレが気になるのは「いいわよ」や「いやだわ」が辛うじて現代語として生き残っているのに対し、「モチよ」が完全に死語になっていることだ。いったいいまの女学生は、「モチよ」の代わりに何を使っているのか。それ以前の問題として、どうにも日本語には合意や同意を示す口語が少ないのではないか。