情念なき日本回帰

柴田南雄 : 合唱のためのシアターピース

柴田南雄 : 合唱のためのシアターピース

柴田南雄の「シアターピース」系の作品を聴くのははじめて。こういうニッチな商品が手に入るのが、アマゾンの魅力である。
いずれの作品も日本の伝統音楽を素材にしているが、いかにも民俗的などろどろしたものを期待すると、肩透かしを喰らうだろう。「ドデカフォニーにもミュジーク・コンクレートにも飽きちゃったから、いっちょジャパニーズ・トラディショナルでもやってみるか」といった感が強い。いかにも東京生まれの主知主義者が作りそうな音楽である。ただの方法論としての、情念なき日本(東洋)回帰。この系譜は柴田南雄高橋悠治坂本龍一へと受け継がれるわけだが、いまの若い音楽家で同じ目的意識を持っているひとはいるのだろうか。