「死ヲ恐レルカギリ貴様ハ永遠ニ絶望ダ! 消エロ!」

この「あびゅうきょ」という漫画家は寡聞にして知らなかったのだが、アマゾンでしつこくおすすめされつづけたので買ってみた。1980年代前半から活躍している、キャリアの長いひとのようだ。
「38歳 独身 無職 趣味は秋葉原(もちろん童貞)」で、自分の存在に何の価値もないと強迫的に思い込んでいる「影男」*1が主人公の短篇連作。ストーリーは毎回ほぼ同じ。自分を救済してくれる美少女がどこかにいると知り、彼女のもとを訪れるのだが、そこで提示される救済手段はつねに「死」。しかし死を病的に恐れている影男はそこから逃げ出し、二次元美少女との妄想の世界に回帰する。いずれもまるで救いがない。さらに「萌え系」と呼ぶにはいささかいびつな描線が、読者の不安をより掻き立てる。
しかし影男が最後の最後に訪れるのが、九段下にある例の施設とは(作者あとがきによれば、「影男」シリーズは毎回このパターンで終わっているようだ)。オタクとミリタリー趣味の関連性は、ちょっと掘り下げて考えたいテーマだ。

*1:この男性の造形は、諸星大二郎の「不安の立像」にあきらかに影響されている。