モーダル

奥泉光『モーダルな事象』(ISBN:4163239707)をようやく読み始める。このひとがエンターテインメントを意識した作品は文体が軽くなりすぎ、かえって集中力が続かないことがあったのだが(『坊っちゃん忍者幕末見聞録』と『新・地底旅行』は、上記の理由で最後まで読み切れなかった)、今回は娯楽性と「ブンガクらしさ」がうまく噛み合っている。大阪市周辺の地理がきめ細かく描写されているのは、本人が近畿大学で教鞭を取っている経験が反映されているのだろう。「新進気鋭の作家、矢部春重」や「恩師である文芸評論家の鍋直美氏と、その同僚でやはり批評家の鮭秀美氏」には思わず笑ってしまった。