「ジャンル」という自意識、など

タイの女性ポップスのCDを、3枚ほど聴く機会に恵まれる。

ナット・ミリア

ナット・ミリア

キャット

キャット

あとの1枚は国内盤が発売されていないどころか、タイトルもミュージシャン名もタイ語でしか表記されていないので、詳細がよく判らない。どうやら企画盤らしいけど。
ベスト盤および企画盤という性格ゆえかもしれないが、どのCDもジャンルにとりとめがない。ヒップホップあり、バラードあり、エレポップあり、レゲエあり、ラテンあり。そしてロックは見事にない(笑)。「ジャンルを越境する」「ジャンルの壁をぶち破る」といった自意識は希薄で、「流行っているから取り入れてみました」という印象が強い。「ジャンル」をめぐるイデオロギー闘争なんざ、先進国の自意識過剰なロック系サブカル少年が陥ってしまうたぐいのローカルな現象にすぎないのだろう。
基本的には打ち込みオンリーで、生楽器が使われている曲は少ない。プリセットをそのまま使っているような曲が散見されるのが、何とも微笑ましい。しかし打ち込みは打ち込みで、各種の機材やシーケンスソフトを使いこなして「洋楽」風の音楽を作るにはそれなりの技術と音楽的な知識が必要になるはずだ。あるいは自国では食えなくなった欧米日のスタジオミュージシャンやエンジニアが、「技術顧問」としてこっそり参加しているのかもしれない。という発想が、ある種のオリエンタリズムの産物なのかもしれないが。