レアリスム/リアリズム

『性の用語集』(ISBN:4061497626)を読んでいる*1。別にセックスに興味がなくても、「語源マニア」的なひとならかなり楽しめる。とりわけ戦前は「マダム」と呼ばれていた女性が、戦後になってから「ママ」になったという指摘が面白かった。
たしか大岡昇平のエッセイに、戦前はフランス語風に表記されていた言葉が、戦後になってから英語風に表記されるようになった(たとえば「レアリスム」が「リアリズム」になった)のを嘆いているものがある。英語はあくまでも「実用的」な言葉であって、抽象的な思弁を展開するのにはフランス語やドイツ語のほうがふさわしいという風潮は、澁澤龍彦が「論客」として活躍していた1960年代までは、たしかにあった。しかしいまでは、一部の人文系の研究者を除けば、あえてフランス語風の表記にこだわるひとはあまりいなくななった。そしてこれは、いわゆる「フランス現代思想」の影響が低下したのと何か関係があるかもしれない。

*1:ただし詳しい感想は、読了してから(と言いつつ書かないこともあるのだが)。