趣味は読書

「最近の出版業界はオタクに迎合しすぎている」といった批判は、耳にしたことが多いだろう。たしかに「もえたん」や「わたおに」があんなに売れてしまう現状は、いささか異様ではある。しかしそれなりに名の知られた大学の文学部で教鞭を取っている知り合いが、「卒業するまでに、せめて1冊でも本を読んでくれれば……」と嘆息するすがたを見るにつけ、「読書」は華道や茶道やアマチュア無線弦楽四重奏の合奏なみに珍しい趣味になりつつある気がしてくる。そんななか、オタクは比較的よく本を読む層であり(ライトノベルしかり、コミックスしかり)、出版社が彼らをメインターゲットに据えるのも自然なことなのではないか。迎合するしない以前に、もはやオタクしか本を読まなくなっているのだ、たぶん。

パソコン関連書籍の世界でも、よく売れるのはアフィリエイトリンクやネットオークションといった「儲け」に直結している企画で、ブログの解説書はそれに較べれば「そこそこ」である*1。「役に立たないことに熱中する」というエートスそのものが、稀薄になっているのだろうか。やっぱり不況なんですかねえ、という馬鹿みたいな結論をとりあえず言ってみる。

*1:「え? ブログってアフィリエイトリンクで儲けるために書くんじゃないの?」という声が聞こえてきそうだ。