リアリズムの宿

渋谷のシネマ・ソサエティーという映画館で「リアリズムの宿」を観る。基本的には気軽に楽しめるオフビートなコメディなのだが、地方都市のお世辞にも文化水準が高いとは言えない家庭の生活があまりにも「リアル」に描かれていて、途中からちょっとした怖さを感じる。作風や作り手の資質はまるで異なるが、筒井康隆の『家族八景』を思わせる怖さといえば、通じるひとには通じるだろう。

と、オレがこの映画を過剰に深刻に受け止めてしまうのは、主人公ふたりの「決して崇高な領域には到達しないであろう凡庸な駄目さ加減」が、他人事とは思えなかったからに違いない。何の実績もあげていないのに、うっかり「クリエイター」を自称したことのあるすべての男性は必見。

原作はつげ義春だが、つげつげしさはあまり感じず。くるりが提供した主題歌「家出娘」はよい。ほら、岸田はやはり、難しいことを考えないほうがいい曲が作れるのだ。