『ノラや』はもう書かれない

ペットの皮下に戸籍情報 無責任飼育、チップ義務化検討

たしかに便利なのかもしれないが、それでも違和感が残る。

みんなこの話題には飽きているかもしれないが(オレもさすがに飽きている。というか、自分の思考のワンパターンさに呆れている)、ペットが失踪しても「チップを埋め込まなかった飼い主の自己責任だ」と言われてしまう、味気ない世の中が訪れるような気がするのだ。

たしかに去年の夏、飼っている猫が行方不明になったときは、精神的に疲労困憊したし、こういうシステムがあったらどんなに素晴らしいだろうかとも考えた。しかし百鬼園先生の『ノラや[amazon]で描かれる荒唐無稽なまでの錯乱状態こそ、ペットに注ぐ愛情のありようとしては「正しい」と感じてしまうのだ。もしてめえのペットが行方不明になったら、アイティーごときに頼らずに、仕事も家事も放擲して全身全霊で探し回る、それが愛ってもんだろ、愛。違うか、ああん?

しかしオレはペットの避妊手術、去勢手術には肯定的なのであって、「チップ」という言葉に過剰反応しているだけの、反時代的な人間にすぎないのかもしれない。ある意味では、「子供を作る自由」を奪ってしまうほうが、チップを埋め込むことよりも残酷なのだから。