全没翼型水中翼船

ニッポニアニッポン[amazon]読了。大馬鹿エンターテインメント小説として充分に楽しめる出来栄え。オレの場合は母親の実家が佐渡にあり、「たとえ船体の揺れはなくとも、辺りに陸がまるで見当たらぬ洋上をひたすら進むのは、やはり少しも快適ではなかった」「全没翼型水中翼船ジェットフォイル」を日常的に利用していたという個人的な事情があるため、なおさらこの小説の主人公の一挙手一投足を滑稽に感じたのかもしれないが。

ともあれこの作家が『批評空間』周辺の言説空間のなかだけで語られているのはもったいない話で、奥泉光と同様、古いタイプの「小説好き」にも受け入れられる作家だと思う。『シンセミア』(上巻 [amazon]、下巻 [amazon])はミステリ好きのあいだでの評判もいいようだけど。