21世紀のノスタルジック・マン

失恋したり、会社を馘首になったり、ママンが死んだり、目醒めたら毒虫になっていたり、国境の長いトンネルを抜けた木曾路がすべて山の中であったりするような劇的な出来事があったわけでもないのに、なぜか深く記憶に刻まれている日は、誰にでもあるだろう。

オレの場合は5年前の4月、小雨がぱらりぱらりと降る夜に、当時住んでいたアパートからいちばん近くにあった定食屋でとんかつ定食を食べながら隆慶一郎を読んでいた日がまさにそうであり、おかげで今日のように生暖かいわりには天気の悪い日には、自分でも気恥ずかしくなるぐらいノスタルジックな気分に陥ってしまう。

ふだんよく読んでいるウェブ日記の最新更新分を見たら、見事に「風が強かった」「暖かかった」という話題で埋め尽くされていたので、他人の顔色を窺いがちなオレとしては、同じ話題を書かないわけにはいかないのであった。