夜ズ

阿部和重アメリカの夜[amazon]を読了する。蓮實重彦の影響の強い作品だが、「闇が、ゆるやかにときの推移していくなかで、その暗さを徐徐に曖昧なものとしてゆき、慎ましくも辺りの風景から身をひこうとしており、一日のはじまりがなしくずしに告げられる」といったもろにハスっているくだりにはあまり感心できず。短い小説なのに読了まで1週間もかかったのは、こうしたくだりに差し掛かるたびに「オレならもっとうまくハスれるぜ」などと余計なことを考えてしまったからだ。われながら凡庸ですな。むしろ主人公と「ガキども」の活劇シーンに典型的な、現代風の会話と短い描写をテンポよく積み重ねていくシーンのほうが筆が伸び伸びとしており、作者の本領はこちらのほうにあるのだろうな、と思わせる。『インディヴィジュアル……』以降の作品ではあまりハスっていないようだけど。