無問題

著作権の考え方』[amazon]読了。著作権においては権利者と利用者に「宿命的な対立構造」があるのだから、全員がかならず得をするシステムではなく、全員がちょっとずつ損をするシステムを作ったほうが現実的だという主張。人文系の論者の抽象的な議論に慣れた眼には、この身も蓋もないリアリズムが新鮮に映る。

ところで出版と著作権といえば本書でも言及されている例の図書館問題だけど、著作を出せばかならず増刷されるなんてのは業界内でも恵まれた存在であり、すでに充分に潤っている人間が「もっと潤いたい!」と主張しているだけのような印象がある。そもそも増刷なんてのは宝くじに当たるようなものであって、「もらえて当然」という前提に立って議論するほうがおかしいのではないか。なーんて書くと業界内弱者の僻みに見えるかもしれないが、実際に業界内弱者の僻みなのだから仕方がない。