待つわ

定食屋でもそうだが、ラーメン屋で注文を済ませてから料理が出されるまでの待ち時間というのはじつに苦痛なものであり、この苦痛を少しでも緩和するため、ひとりで外食するときはかならず暇潰し用の書籍か雑誌を持ち歩くようにしているのだが、今日は何も持たずに外に出てしまい、それでも最初は往路で適当なものを買えばよろしいと思っていたのだが、練馬駅前にある2軒の新刊書店と2軒の古本屋をじっくり検分しても、いまの気分、ならびに「ラーメン屋で何となく読む」というシチュエーションに似つかわしいものが見当たらず、それでもブックオフにはちょっと面白そうな掘り出し物があるにはあったのだが、財布には1万円札しかなく、105円の文庫本を買うのに1万円札を出すのも気が引け、かといって600円のラーメンを食べるのに、新刊書店で700円の新書を買うのも本末転倒のように感じられ、最終的にふだんはあまり利用しない古本屋で値段的にも内容的にも妥協できる教養系の新書を見付けはしたのだが、寒いなかを何軒もの書店をハシゴしてすっかり身体が冷えたせいで店内で急激な便意に見舞われ、おまけに前に並んでいたふたり連れの女性が会計で揉めており、しかもその店にはトイレがなさそうだったので、慌てて店を出て駅前の西友のトイレで用を足し、やれやれと舞い戻ったときにはくだんの店は閉店時刻をすぎており、ここまでくるとすべてが馬鹿馬鹿しくなり、本を買うのは諦めてラーメン屋に赴くも、やはり読むものがないとラーメンが出てくるのを待つまでの時間は苦痛以外の何者でもなく、さらには無駄にすごしてしまった2時間に対する悔恨の念も押し寄せ、「うまい」と評判になっていて期待して入った店であったのに、味はまるで印象に残っていないのであった。