時事ネタ

と、こういう時事的な話題についてウェブ日記で言及するときは、あえて註釈めいた文章は書かないようにしている。十数年後に偶然この日記を発見した人物が、「ふだんは小説や音楽の話ばかり書いているひとが、なぜこの日にかぎって銀行の話題を持ち出したのだろう」と首を傾げるのを想像するのが楽しいからだ。そのころになってもこの日記が存続しているのかどうか、はなはだ微妙ではあるのだが。かくいうオレ自身も、むかしの作家が「当時は註釈なしで通じるくらい有名だったのに、いまではすっかり忘れ去れている人物・事象」に言及している箇所を発見するは嫌いではい。

たとえば筒井康隆(は、「むかしの作家」じゃないけれど)の最高傑作(のひとつだと思う)の「関節話法」には、「犬人間」「猫人間」という単語が出てくるが、初読時はさっぱり意味が判らなかった。しかしあとになって、この小説が執筆された当時、人間をイヌ型とネコ型に分ける性格分類法が流行っていたことを知った。こういう「トリビアの泉」のネタにすらなりそうにない、完全にup to dateな魅力を失った雑学というのは、じつに愛しいものである。

あ、「十数年後に偶然この日記を発見した人物」にとっては、「トリビアの泉」も理解不可能な固有名詞だったりするのかな。