イモ

音楽誌が書かないJポップ批評30 YMO&アーリー80's大全』が届く。YMOはメンバー全員がロジカルな語彙でみずからの音楽について語ることができるバンドであり、膨大な数の関連発言が遺されている。こういうバンドを相手に何かを論じるのは難しい。かとうけんそうのように「誰も知らないとっておきのナイショ話」を知っている書き手なら、ネタの面白さそのもので勝負できるが、そうでない書き手は既存の言説を忠実になぞりつつ、YMOの「革新性」を言祝ぐか、なかば逆ギレ気味に「やっぱりオレはYMOは認められない」と否定するか、そのどちらかになってしまう。

そんななか、格闘技ヲタ的な視点から「坂本龍一高橋幸宏を闘わせたらどっちが強いか」というどうでもいいテーマをあくまでも大真面目に論じた掟ポルシェ「検証!『最強』伝説。YMO、もし戦わば……」は圧巻。戦略勝ちである。

オレの書いたコラム? あれはどうでもいいです。何でもかんでもモーニング娘。と結び付けるのはわれながら食傷気味だったのだが、編集部からオファーがあった時点では、あれしか書くことを思いつけなかったのよ。いまなら「音楽を数値で捉える音楽家の系譜」として、兼常清佐柴田南雄坂本龍一のラインについて論じてみたいけど。