集英社と講談社

ようやく練馬駅にたどりついた宿主と夕食。集英社コバルト文庫講談社ティーンズハート文庫の違いについて語り合う。コバルト出身の直木賞作家は多いが、ティーンズハート出身の直木賞作家は少ない。そもそもコバルトは川上宗薫、富島健夫、平岩弓枝(!)といった広い意味での純文学系の作家を多く起用していた時期があり、いまでも少女の内面を深く掘り下げる作風のものが多い。それに対してティーンズハートは娯楽に徹したものがメインになっている。この差異は少女漫画にも明確に現れており、集英社の雑誌(特に『ぶ〜け』)に連載された作品は講談社のそれと較べると、内容的に深みのあるものが少なくない。

しかし講談社はミステリやホラーを手がけるなると傑作を量産する。そもそも「大日本雄弁会講談社」と名乗っていたことからも判るように、講談社は創業当初から娯楽読み物がメインの出版社であり、「アンチ岩波書店」的なポジションにあった。そのころの気風がいまでも受け継がれており、エンターテインメント系の漫画や小説の編集には独自のノウハウを持っているのではないか、等々。

それからコバルトが一時期、実力はあるが「ブレイク」できないでいるSF作家の活躍の場となっていたことも、心に留めておくべきだろう。