コヤノとウチダ

休日出勤した宿主が買ってきた内田樹『期間限定の思想』(晶文社[amazon]と、小谷野敦『中庸、ときどきラディカル』(筑摩書房[amazon]をぱらぱらと拾い読み。内田樹小谷野敦はじつはけっこう「近い」ポジションにいるのではなかろうか。カルチュラル・スタディーズには理解を示しつつも距離を置き、フェミニズムには(逆説的に評価しながらも)結局のところは批判的で、健全な意味での「ナショナリズム」の復権を目指している点など。

しかし実際に文章を読んで得られる感触はかなり異なる。内田樹が大らかなユーモアとともに語っていることがらを、小谷野敦神経症的で露悪的なアイロニーによってしか語れない。そしてその差は、「若いころにロックンロールを聴いていたか否か」に求められるような気がするのだ。「サブカルチャーが覇権を得たいまでは、それこそが『制度的な』発想なのだ」と言われようとも、オレは若いころにはっぴいえんどビートルズストーンズを愛聴していた初老の大学教師は、それだけの理由で信頼したくなるのであるよ。

ところでむかし、「天皇制を基盤にした共産主義社会こそが、来たるべき日本社会の理想である」と語った文学者がいたような漠然とした記憶があるのだが、あれはいったい誰なんだっけ。