フリーライター崩れ

犯罪ホロスコープ1 六人の女王の問題 (カッパ・ノベルス)

犯罪ホロスコープ1 六人の女王の問題 (カッパ・ノベルス)

読了。坂口安吾ジョン・ライドンカート・コバーンにわが身を投影しつつ自己言及的な隘路に陥り、代償作用としてやたらとペダンティックな議論を繰り広げていた若いころの作品に較べると、本当に普通(って言うな!)の、しかし良質なミステリ短篇が揃っている。
ただし奇矯な性格のフリーライター崩れが登場する話がやたらと目立つのが気になった。まあ、ミステリの狂言回しとしては、もっとも扱いやすい職種なのかもしれないが。

独歩と乱歩とハイレッド・センターと金大中

「21世紀的なもの」として「国木田独歩7世」が登場するのが、『さよなら絶望先生』でオレがいちばん気に入っているギャグである。なぜそんなに面白いのか。まず漱石でも鴎外でも藤村でもなく独歩という作家のセレクトの絶妙さ(しかもそれに言及しているのが、「カフカちゃん」である)、そしては「7」が「21」の約数であり、かつ素数であること。この辺がオレを笑いの好みに合っていたのであろう。
ところで「国木田独歩」と「江戸川乱歩」は字面が対照的である。乱歩のペンネームがエドガー・アラン・ポーに由来しているのは周知の事実だが、「えどがわ・らんぽ」にどんな字を当て嵌めたらいいのか、けっこう悩んだかもしれない。特に「らん」と「ぽ」は、そのように読ませることができ、かつ小説家のペンネームとして使える漢字が少ない。そこでふと同じく早稲田出身である独歩を思い出し、「『国』と『江戸』、『木』『田』と『川』、『独りで歩く』と『乱れて歩く』は好対照になるわい」と気付き、「乱歩」とさだめたのではないだろうか。
そして話はハイレッド・センターに移る。この芸術家集団の名称は構成メンバーの、

  • 松次郎
  • 瀬川原平
  • 西夏

の頭文字をそのまま英語に直訳したものだが、さっき入浴していたときに「金大中」は「ゴールドビッグ・センター」になり、これまた「ハイレッド・センター」と好対照となるのに気付いた。「中」を土台にして赤色と金色、高さと大きさが螺旋状を描いている。ハイレッド・センターにもっとも理解を示した韓国人は白南準だが、残念ながら「高赤中」と「金大中」が似ているようには似ていない。せいぜい紅白の関係が認められるだけである。
だからどうした、と言われたらそれまでだが、こういう言葉遊びが根っから好きなのだから仕方がない。