その拍手の<作者>とは誰か?

何も聞こえない!――無音の曲を本当に販売しているiTunes Music Store
半年も前の記事を話のまくらにするのも恰好悪いが(と、いちいち気にかけるのがもっとも恰好悪い)、アルバムをトラック単位で機械的に分割しているせいで、iTMSでは上のようにおかしなファイルが真面目に売られていることがある。たとえばクラシックのライブ録音盤には、拍手だけが独立したトラックになっているものが少なくない。このトラックがきちんと150円の値を付けられて、ほかのトラックと同等に売られているのだ。
嘘だと思ったらiTMSにアクセスして、「applause」で検索するとよい。なかにはアバド/ベルリンフィルのマーラー「第六」のように、単体で購入できるのが「applause」しかないという、とんだ現代芸術になっているアルバムさえある。おまけに「作曲者」が「Not Applicable」、「アーティスト」が「Audience」となっているケースが目立つ。なるほどたしかに拍手には適切な作曲者=著作権者は存在せず、演奏者=著作隣接権者はその会場にいた聴衆となる。近代的な著作権システムは、意外とふところが深い(ある程度の拡大解釈は許す)のであるなあ、と感心してしまった。

自衛隊に入ろう 音楽を奏でよう

自衛隊音楽隊 ミリタリーパワーズ
iTMSのクラシックコーナーでは、自衛隊東京音楽隊のCDの売れ行きがよい。そこでわざわざ自衛隊に入ってまで音楽をやろうとするのはどんなひとたちなのかと興味を惹かれ、調べてみた。かつては「高校でブラスバンドを経験していたという程度」でも入隊できたようだが、いまでは音楽大学芸術大学の卒業者が入隊を希望するようになったとのこと。それだけ愛国的な若者が増えた、というわけではなく、単に一般のオーケストラに就職するのが難しくなってきたかららしい。この辺はオーバードクターの就職難と、構造的には同じか。
ところで海上自衛隊陸上自衛隊ではレパートリーが異なっていたり、おたがいにいがみあったりしているのだろうか。