ジャズ化
Spooky Actions Music of Anton Webern
- アーティスト: Spooky Actions
- 出版社/メーカー: The Orchard
- 発売日: 2004/06/08
- メディア: CD
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ところで殊能将之は「ル・マルトー・サン・メートル」について、次のように語っている。
厳密な方法論に則っているのに、フリー・インプロビゼーションのように聴こえるのは、ブーレーズの精神的お師匠さんであるウェーベルンにも当て嵌まる。それこそブーレーズあたりが監修している「正しい」ウェーベルン全集と聴き比べたわけではないが、ドラムスが加わっていることを除けば、Spooky Actionsの演奏は譜面に忠実なのではないだろうか。こういう音楽を下手に「ジャズ風」にアレンジすると、単に安っぽくなってしまう可能性が高いが、Spooky Actionsはそれをうまく回避しているからだ。だからこそ「ジャズ風」ではなく、「ジャズ化」と形容したのだが。
ピエール・ブーレーズの代表作「ル・マルトー・サン・メートル」はトータル・セリエリズムの代表作でもある。つまり、ひとつのセリー(音列)に基づいて、すべてが作曲されているわけで、これほどシステマティックな音楽はないはずだ。
ところが、作曲家近藤譲はどこかでこんな発言をしている(記憶で書いているので大意)。
「『ル・マルトー・サン・メートル』の何がすごいかというと、トータル・セリエリズムによって厳密に作曲されているはずなのに、実際に聴くとアモルフ(不定形)に聞こえることだ」
確かにそのとおりで、「ル・マルトー・サン・メートル」はまるで演奏者が自由に即興演奏をしているかのように聞こえる。
a day in the life of mercy snow
少し話はずれるが、クラシックや現代音楽に対する苦手意識は、音色レベルで克服されるような気がする。たとえば「ル・マルトー・サン・メートル」をちょっと先鋭的なポップス好きに聴かせると、「何だかよく判んないけど、面白い曲じゃん」と言われることが少なくない。それはこの曲が「いかにもクラシックらしい」楽器をほとんど使っていないからではないか。冨田勲が評判になったのも、同じ理由だろう。Spooky ActionsのこのCDも、現代音楽に対する偏見を取り除く1枚として機能するかもしれない。
ジャズジャズしい
- アーティスト: John Coltrane
- 出版社/メーカー: Atlantic / Wea
- 発売日: 1994/06/16
- メディア: CD
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