男の年齢

もう何年も前になるが、「お前も含めて、なんで出版関係の人間は年齢不詳なのだ」と言われたことがある。そのときはうまく返事ができなかったのだが、いまにして思えばハビトゥスの問題かな、という気がしなくもない。だいたい20代後半から40代まで、男性の容貌はそう激しく変化するわけではない。だとしたら年齢を特定する手掛かりは、ハビトゥスにあると考えたほうがよさそうだ。
中堅クラスの一般企業に就職して中間管理職になれば、いかにも中間管理職らしい服装や言動を身に付けるようになり、それが私生活にも反映されるのだろう。しかし出版業界はそういうわけではない。30代後半にもなっても大学生みたいな服を着たライターが編集部にお邪魔して、単なる雑談とも本格的な打ち合わせともつかないことを、同じく学生みたいな服装の編集者と語り合う。こんな環境では、「実年齢にふさわしいハビトゥス」はなかなか身に付かないのではないか。

女の年齢

これは1年ばかり前のことだが、ある呑み会で「男性の『若さ』と女性の『若さ』は違う」という話題になった。男性の場合はたとえ同じ40歳でも、政治家なら若手、学者なら中堅、スポーツ選手ならベテランと見做される。すなわち実年齢ではなく、職業によって「若さ」を判定される機会が多いわけだ。ところが女性はいくら社会進出が増えたとはいえ、いまだに実年齢だけで「若さ」を判定されることが多い。だからこそ著者略歴のたぐいで、生年を曖昧にする女性がいるのだろう。もちろん実年齢を明記する女性の漫画家やエッセイストもいるが、これが男社会に対する「宣戦布告」のように思えるのは(そうした女性は、フェミニズムジェンダー論と親和性が高いことが少なくない)、オレの考えすぎだろうか。