中学生のころから「日本に論理的な文芸批評が定着しなかった最悪の元凶ははこの男である」という父親の説教を聞かされたせいで、
小林秀雄は「ただでさえ悪い頭が、読んだらさらに悪くなる物書き」リストの最上位に位置していた。ゆえに34歳になるまで、この小柄な大酒呑みの文章は一行たりとも読んだことがなかった(現代国語の授業で無理に読まされたものは除く)のだ。しかしこの本は読むと意外と面白い。冥府の父は「
小林秀雄を読んだせいで、L'idiot de la familleがますますidiotになった」と嘆いているのかもしれないが。コンピューターと将棋について論じた冒頭の短文は、いま
Bonanzaを開発しているひとが読んだらどう思うのだろうか。