もえキャピ

中野で編集者のひとを交えて呑む。といっても打ち合わせのたぐいではなく、プライベートな用件で知り合ったひとが、たまたまそうした職業に就いていただけなのだが。まあ、「ヴ・ナロード」という編プロを立ち上げ、『萌える資本論〜もえキャピ』を作りたいよね、なんて冗談で盛り上がってしまうあたりが、「らしい」といえば「らしい」のだが。両親がブルジョワ階級出身の志望者は原則として不採用、女性社員が原稿を受け取りに行くときは、かならず猫耳を着用、その分の手当ては別途支給、またライターの好みに合わせて、巨乳社員と貧乳社員を使い分ける、とか。

しかしエン子ちゃんやマル美ちゃん(ネーミングはかなりいい加減)の萌え絵を描けるイラストレーターはともかく、『資本論』をオタク向けに噛み砕いて解説できるライターがどれほどいるのか。

踏み絵としての「もえたん」

ところで『もえたん』に出てくる例文でいちばん面白いのは、疑いようもなく「The captain is bright.」なのだが、これは何がどう面白いのかを説明すると、まったく面白くなくなってしまう。ゆえに一般メディアが『もえたん』を取り上げるときは、「He is serious about which sister he should take.」のような判りやすい例文が紹介されがちなのであろう。

どの例文を面白いと思うかで、その読者のオタク的感受性の濃淡が明らかになってしまうあたり、『もえたん』は踏み絵のごとき書物ではあるまいか。