2007-06-01から1ヶ月間の記事一覧

文学と哲学とWikipedia

Wikipediaを批判するのがアルファブロガーのたしなみとなりつつある昨今だが、オレはそれなりに有益な情報源だと思っている。しかし文学関係や哲学関係では、「これはいかがなものであろう」という記事に出会うことがある。たとえばジャン=ポール・サルトル…

星先生と由良先生

大量の参考文献をひもといては該当箇所を見付け出し(なぜ索引が必要な本にかぎって付いていないのか。全文検索機能があるという点においては、オレはネットの活字への優位性を認める)、決められたフォーマットに従って短い文章に纏め上げるという作業を連…

ある保守リベラルの死

つい数分前に読んだ朝刊で、宮澤喜一の訃報を知る。自分でも思っていなかったくらいの動揺をいま感じている。政治の専門家からすれば失笑を禁じえない意見かもしれないが、護憲派・ハト派の代表格として存在感を示してきた自民党の首相経験者の死は痛ましく…

仏独戦争?

いまオレの手元には「世界の名演奏家」と副題された『レコード藝術』誌の1966年7月臨時増刊号がある。なぜそんな古い雑誌が手元にあるかといえば、母親の蔵書で、かついまの仕事の参考になりそうだからだ。副題からも判るように、当時現役で活躍していたクラ…

「ブログの書籍化」ではありません

昨日の日記でも取り上げた吉田アミさんの『サマースプリング』(ISBN:4778310810)ですが、いわゆる「ブログの書籍化」でもなければ、過去に雑誌に発表した文章をまとめたものでもありません。「著者の実体験を元に書かれた。しかしいわゆるエッセイ、いわゆ…

「叢書」の復権

吉田アミの初の著作、『サマースプリング』が太田出版より献本される。吉田さん、ならびに編集担当の郡淳一郎さん、木村カナさん、ありがとうございます。「恵投」とは「はからずも人からものを贈られ」たときに使うようだが(『新明解国語辞典』第四版より…

宙吊りの間違い電話

昨日は日記を更新しなかったのは、「登録する」をクリックしたまさにその瞬間からはてなダイアリーが定期メンテナンスに入り、そういうときにかぎってエディタで下書きをしなかったからである。他意はない。 同じことを書き直すのは気が進まないので違うこと…

師弟関係の変容

NHK教育のETV特集で菊地成孔がマイルス・デイヴィスを語るという、オレを狙い撃ちにしているとかしか思えない番組をやっていたので観てしまう。これまでどんな解説書や入門書を読んでも理解できなかったモード・ジャズの革新性がようやく判る。このひとはや…

オレはいつでも政治的

「この音楽には政治的なメッセージが込められている」と言えば、その意味は「この音楽には簡単には変えられない確固たるメッセージがある」となる。しかし「この男は政治的だ」となると、「この男は私利私欲ばかり考えて狡猾に振る舞っている」となる。この…

文学部的な漫画

昨日の日記で、「文系なら文学部、理系なら農学部がカリキュラムが誤解されやすい学部だ」と書いた。しかし幸いなことに、農学部には『もやしもん』(最新刊が出たようだが、まだ買っていない)がある。あの漫画のおかげで農学部や農業大学に対する偏見はあ…

偏向知識人

かつてオレがアルバイトしていた会社の同僚に、「偏向知識人」がいた。ちょっと「ネット右翼」的なところがあったが(彼こそがオレがはじめて出会った、「ネット上で右派的な言説を繰り広げる20代の青年」だったのかもしれない。1998年ごろの話である)、そ…

かつこよすぎる中村とうよう

青土社はかつて『ユリイカ』や『現代思想』と同じ判型(もちろん執筆陣も似通っている)の『音楽の手帖』という不定期刊行物を出していた。オレの手元にはいま、1979年に発行された「ベートーヴェン」という号がある。ここに中村とうようが「ロール・オーバ…

ファム・ファタールはどこにいる?

どこかで誰かが中二病や黒歴史という言葉を一回使うごとに、世界から価値あるものが一つずつ失われてゆく。 subtext - それはとても悲しいこと 友人に紹介してもらって、非常に感激した名言。オレならここに「サークルクラッシャー」を付け加えるだろう。か…

バッドノウハウ?

わざわざ「?」を付けたのは、自分がこれから書くことがバッドノウハウに該当するのか、自信がないからだ。 SPAMメール対策のために、メールアドレスをわざと判りづらく書くひとがいる。たとえばすべてカタカナやひらがなで書いたり、特定の文字列だけを全角…

オンガク

構成も結論もまったく決めずに書く。いつも以上に隙の多い文章になるだろう。 「義務教育でかならず勉強するのに、なぜか身に付けられないもの」といえば、多くのひとは「英語」と答えるだろう。しかしそれ以上に深刻なのは「音楽」だ。いくら「英語ができな…

「専属なしでフリーでやるなら割のいいアルバイトを探さなきゃむり」

おしゃべり交響曲―オーケストラの名曲101作者: 柴田南雄出版社/メーカー: 青土社発売日: 2007/05/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る柴田南雄がオレがもっとも敬愛するクラシック系の音楽評論家で、しかもその著作の多くがいまでは絶版と…

眼鏡雑考

オレは極度の近視で、過去に何度か眼鏡を破損・紛失して大いに往生したことがある。そのため、「眼鏡が普及していなかった時代は、近視のひとはさぞかし生活に苦労しただろうなあ」と想像していたのだが、今日になって、じつはそうでもなかったのかも、思え…

猫と高山

紀伊國屋書店の公式サイトで、高山宏が書評ブログをはじめている。 http://booklog.kinokuniya.co.jp/takayama/ 何といっても文体にむかしながらの張りが戻ってきたのが嬉しい。数年前までの高山宏は一面識もないこちらまで心配になるくらい調子の狂った文章…

犯罪のディスクール・断章の続き

本当は昨日のうちに書いておきたかったのだが、長文になりそうだったので後回しにしたことを書く。「犯罪と報道」でオレの印象に残っているのは三島事件だ。この事件について筒井康隆(だったと思う)が、「『三島由紀夫自殺』と報道するのはおかしい。『三…

犯罪のディスクール・断章

日本語版Wikipediaで「山口二矢」を検索しようとすると、なぜかWikipedia - 浅沼稲次郎暗殺事件にリダイレクトされる。事件を起こした当時、山口二矢は17歳だったわけで、「未成年の犯罪者の実名を独立した項目にするのはよくない」というWikipedia運営者の…

一重瞼で性格が悪い

のだめカンタービレ (18)(講談社コミックスキス)作者: 二ノ宮知子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/06/13メディア: コミック購入: 3人 クリック: 62回この商品を含むブログ (376件) を見る限定版も出ているようだが、そういうものを集める趣味はないので…

音痴とディシプリン

音痴といっても意味は二種類ある。まずは音楽の楽しさや素晴らしさがまったく理解できないという意味での「音痴」、次に音楽は嫌いではないが、なぜか正確な音程で歌が歌えないという意味での「音痴」。ここでは後者について語る。 オレは小学校3年生までは…

ナゴヤ! ナゴヤ! ナゴヤ!

乱歩と名古屋―地方都市モダニズムと探偵小説原風景 (東海 風の道文庫)作者: 小松史生子出版社/メーカー: 風媒社発売日: 2007/05メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (6件) を見る学生時代、江戸川乱歩が三重県生まれの名古屋育ちだと知った…

「はてなの中にいればすべて安心」

以下はある文章のパロディーである。 ここでわたしの個人的回想をお許しいただければ、2000年代の前半のはてなでは、ココログやlivedoorブログの正確なURLを知らないユーザーがいくらでもいた。ましてそこでどのようなユーザーがどのようなブログを開設して…

No more soured sentiment!

近所の書店をぶらぶらしていたら、下の本に出喰わす。“ポストモダン”とは何だったのか―1983‐2007 (PHP新書)作者: 本上まもる出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2007/05メディア: 新書 クリック: 46回この商品を含むブログ (41件) を見る半年ほど前にニュー…

従軍慰安婦とわたくし

オレが「従軍慰安婦」という言葉を知ったのは小学校の5年生か6年生のとき、すなわち1981年か1982年だ。おぼろげな記憶を頼りにネットで検索したところ、千田夏光『従軍慰安婦・慶子』(ISBN:433402453X)の広告を見たのがきっかけだと確認できた(どうやらこ…

いじめの二次被害

昨日は書くのをためらったことを書く。 オレははてなブックマークを大いに活用しており、便利で有益なウェブサービスだと思っている。ゆえに「はてブ衆愚論」のような記事(こういう記事にかぎって「人気エントリー」になるのが不思議な現象ではあるのだが、…

河出さん、ちょっと……

幸福は永遠に女だけのものだ (河出文庫)作者: 澁澤龍彦出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2006/11/03メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 5回この商品を含むブログ (13件) を見る高校生のときは河出文庫の澁澤龍彦や種村季弘にお世話になったオレだが、最…

関西系企業の経営術(ビジネスブログみたいなタイトルだ)

本当はもっと書きたいことがあるのだが、安易に触れると「炎上」しかねない話題なので、もう少し時機を窺うことにする(そうこうしているあいだに「いまさら何言ってるの?」となるのは、ネットの宿命なのだけれども)。そこでまたもや、むかしの思い出話な…

自分語り、ふたたび

昨日、「ネットにおける自分語り」について論じたところ、静かだけれども好意的な反応を引き起こした(ウェブだろうが活字だろうが、「静かだけれども好意的な反応」が書き手としてはいちばん嬉しいものである)。そして知人から、「気に入らない文章やつま…